春の夕暮     中原中也                                                     「サイトの歩き方」も参照してください。

 

    塗板がセンベイ食べて

    春の日の夕暮は静かです

 

    アンダースロウされた灰が蒼ざめて

    春の日の夕暮は穏かです

 

    あゝ、案山子はなきか――あるまい

    馬嘶くか――嘶きもしまい

    ただただ青色の月の光のノメランとするまゝに

    従順なのは春の日の夕暮か

 

    ポトポトと臘涙に野の中に伽藍は赤く

    荷馬車の車輪  油を失ひ

    (現在と未来との間に我が風の夢はさ迷ひ――  註・抹消された一行)

    私が歴史的現在の物を言へば

    嘲る嘲る空と山とが

 

    瓦が一枚はぐれました

    春の日の夕暮はこれから無言ながら

    前進します

    自らの静脈管の中へです     


(註:これは「ノート1924」に書かれていたもの。詩集にある定稿とは少し異なっている)

  中也   

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