ダダさんの「正しい」出雲弁講座             サイトの歩き方」も参照してください。

  端午の節句でしょうか、錦絵から   花火はいつの時代も人気です

まず「はいごん」という言葉を聞いて、どのような事柄を思いつきますか?何を連想しますか。管理人も初めて、この言葉を耳にしたときは、一体なんのことやら皆目見当がつきませんでした。でも、言葉には、それが語られる場面(誰が誰に対してなどの条件)があるわけですから、次のように大人が子供たちに言ったとしたら、その意味合いも少しは鮮明になるでしょう。

   こらこら、家のなかで、そげに、はいごんすーだないが。

どうですか、分かりましたか?わかりますよね。そうです、子供たちに「家の中で騒ぐのは止めなさい」と窘めているのです。意味は明らかになりました。しかし、この「はいごん」は、音からも分かるように大和言葉ではありません。恐らく「漢語というか漢字読みの単語」を、そのまま音読みにした言葉に違いない。では、訛りも加わっているとして「騒ぐ」という意味の言葉、音読みの言葉があるのでしょうか?随分と考えてはみたのですが一向にそれらしき言葉が思い浮かびません。そこでWEBを検索してみると、一つの指摘が見つかりました。

家の中でそげに「はいごん」すーだないが

それは「はいごん」は「敗軍」(はいぐん)の訛ったもので、昔、戦に破れた者たちが「大騒ぎで敗走するさま」を目の当たりに見た人たちが、のちのち日常語な言葉として使うようになった、とするもの。いかにも「音」が似通っているので興味深い説なのですが、ある言葉を、全く別の意味として、特定の地域だけで使用している例が、この「はいごん」以外にあるのかどうか、それが不明なので、一応、参考意見として紹介しておくことにします。また、戦国から江戸期にかけての間「敗軍」という言葉が市井の者にとって一般的な表現であったのかどうかも調べてみる必要があるでしょう。

  これも敗軍?それとも勝軍?   PR

さて「は行」にも、独特の出雲言葉の言い回しが沢山あります。先ず、下の表を見てください。標準語にも全く同じ言葉(音)としてあるものから始めましょう。

   ふーりんが、さばっただらか、はしって、いけんわ。

   なんと、はばしのぉ。そげなこと、しとぉと、はでばから、ぼろけて、ほえんなんぞ。

   ばんじましてねべったべった、だんだん。誰だれさんは、もお、ひもおとしでしたかいね。

   あら、ふろふろしとぉが、せわないか。

 ばくらとする   はしる  はでば  はばし  ばやばや  ばんじましてね 
 ひとばいしょ   ひもおとし  びんばさん 
 ふーりん  ふぇーまめ   ふくんぎゃ  ふつごな   ぶっちょー  ふろふろ
 べこちゃん  べった
 ほいた  ほえる  ほのって  ぼろける  ぽんがでる  ほんにね

 「はせ場」に稲を掛け、乾燥させます。今では余り見かけませんが…  稲わら(ミサイル?)

初めの例で紹介している「はしる」は勿論「走る」ではありません。これは「(しみるように)痛い、うずく」という意味で使われます。一般的には『歯がはしる』などのように使われ場合が多く、同じ「痛い」という意味でも他の部位、例えば「お腹がはしる」「頭が走る」などとは言いません(他の地方では「腹がはしる」といった使い方をする所もあるようです)そして「ふーりん」はヒルを意味しています。この言葉については随分と考えてみたのですが、結局、良い答えは見つかりませんでした。まさか、あの「風鈴」から来ているとも思えませんし…。「はでば」は上の画像でも紹介している「はせ場」が訛ったもので、稲の乾燥用に秋の一時期、つまり刈り入れの時だけ田んぼに木で組まれる大きな棚のようなものです。一番上までは3,4メートルもの高さにもなりますから『田舎中学三文オペラ』の主人公たちが稲穂ミサイルを投げつけるのには格好の舞台になるのです。「ぼろける」は「おちる(ころげる・ころげおちる)の意味ですが、語感が何となく暖かいように感じるのは身びいきでしょうか。それから「ほえる」(例文では「ほえんなんぞ」)も、標準語で言う「吠える」ではなく「泣く」という意味の言葉です。動物の動作と、人の仕草を同じ言葉で言い表した例の一つですね。珍しい言葉の一つ「ばくらとする」は、気持ちがゆったりとして落ち着いた様子を表すもので、方言ならではの温もりが感じられます。

ひもおとし、おびむすび        

ひもおとし」も独特の言葉です。これは方言というより古い言葉が、そのまま地方に残された例で、出雲に限らず各地で使われています。俗に言う「七五三」子供のお宮参りを表したもので、いい響きのある言葉だと思います。WEBで拾い集めた雑知識によれば七五三の儀式が広まったのは江戸期のことで、子供の無事な成長を節目節目で祝うため氏神様などに参拝したもの。「紐落」は「帯結」(おびむすび)とも言われていますが、これは、幼時の間使用していた「付け帯」を止め、初めて大人と同じ「帯」を用いることから付いた呼称で、女の子の場合七歳の時に行われる儀式なのです(上の錦絵を見てください。子供たちも、ちゃんと帯を結んでいますね)現在、我が国の初等教育は七歳から始められていますが、これも古くからの風習・習慣を背景にした学制である証なのかも知れません。『男女七歳にして席を同じうせず』は遠い昔の出来事だと思い勝ちですが、人が物事を覚え始める時期としては「七歳」が最適なのでしょう。

最期の用例の言葉については「なんとなく」雰囲気が感じ取れるのではないでしょうか。「ふろふろ」は「食べ物を(異常に)欲しがり、がつがつしている(人)」の意があるのですが、「浮浪(者)」に関連付けて解釈することが出来るかも知れません。ただ、この言葉も同じ音を重ねて使う、古い形の言葉なので、直接の関係があるのかどうか?ですね。次回は「ま行」になります。ちょっこし、お待ちください。

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