ダダさんの正しい出雲弁講座                         サイトの歩き方」も参照してください。

歌舞伎芝居の元祖は、わが出雲の阿国(おくに)さん、ということになっているのですが、本当のところはどうだったのか?第一、出雲訛りの台詞・言葉が京の都人に果して理解出来たのか?ついつい彼女の事について脱線したくなって仕舞いたい所をぐっとこらえて第4回目「た」行の講座を始めましょう。「た」行の横綱格「ただもの」「だんだん」については、もうご紹介していますので、今回は、まず使用例をいくつか上げて話しを進めることにします。

    ほんに、たいぎで、いけんわ。ちょっこしたばこすーか。

    たいげ、しぇたもんだ。だらずげなことばっか。

    ちとなかいつばえーこと、やめーだが。

    あら、どこだいの、ちりで、でたげなしだが。

ここまで「正しい出雲弁講座」を学んでこられた皆さんなら、もう、だいたいの意味がお分かりになることと思いますが、それでも念のために解説を。1例目の「たいぎ」は「大儀」の意そのままですから「本当に、疲れた。少し、休憩しよう」2例目の「たいげ」は「大概」が訛ったもので「だらず・げな」は「足らず=足りない=脳味噌が不十分」と、かなり屈折した表現になっていますが、要するに「馬鹿」馬鹿しい、を表す言葉です。従って意味は「全く、仕方の無い奴だ、馬鹿げたことばっかり(して・言って)」になります。「ちとなかい」は「少しの間」、「つばえー」は主に子供が「じゃれあって」騒いでいるのを止めさせる時に使う言葉で、要するに「静かに、じっとしていなさい」という感じの言葉です。関西弁で言うなら「ほたえる」に相当するのかも知れません。「どこだい」は「何々(さん)の」あるいは「何々という土地の」といった、誰かの出身(家・土地・親族などを含めた一族)を暗喩する話し言葉で「ちり」は、聞く者にとっては「つり」のようにも響きます。恐らく「ち=血・血縁」の変化したものだと考えられます。「でたげな」は「でた・げな」の複合したもので、この場合は「見えっ張りの」あるいは「外見ばかりを飾る」といった良くない印象の人を形容しているのです。

 国芳の画く阿国  歌舞伎の阿国(同右)   PR

出雲弁に限ったことではありませんが、主に西日本では直接的な表現が好まれない傾向にあるようです。良く言えば「婉曲」悪く言えば「曖昧・慇懃」と感じられなくもありません。ただ、この講座の冒頭でもお話ししましたが、農業を主体とした、土地に根ざした(もっと言えば土地から離れ難い)、ある意味で閉鎖的な社会の中で、複雑な人間関係を出来るだけ円滑に維持してゆこうとすれば、どうしても普段から言葉使いに慎重さ・丁寧さが求められ、その長い歴史的な時間の経過の中で生活上必要不可欠なものとして工夫された知恵が方言(日本語)の一面を形作っていると思うのです。また、表現が小難しくなりつつありますので、表に取り掛かります。

 だげ  だまくらかす  だらくそ  たんかもん 
 ちーはん  ちゃんこする   ちょーさいぼ   ちょんぼし  ちんがちんがしとー
 つろくさん  つぐなう  つけごめ  つばえやこ  つるんぼし
 でいりもん   てご  てぼろけ  でべそ  でれんでれんいって 
 ど  どげしゃもね  どし(どす)  どまかす  どんべ

「だ」はお察しの通り「断定」を意味する言葉ですから「だげ」は「だ・げ」つまり「のようだ・だそうだ」(気配)を意味しています。この「だげ」が「どげ」になると「どう・どのような」の意となって、次のような展開をみせるのです。

 どげ   どげこげ   どげぞ   どげだい   どげだらか   どげな   どげなと   どげん 

そして、もう「どうしようもない」となると「どげしゃもない」という表現になります。この場合の「しゃ」は、前回までに見てきた語気を強めるための接頭語ではなく、明らかに「仕様」が訛ったものだと考えられます。「ちんがちんが」は外見が「弱弱しい」あるいは「みすぼらしい」という時に使う言葉ですが流石の管理人も、この語源に関してはお手上げです。また「でれんでれん」は「慌しく(走る)」様子を音の連なりで表したもので、これも言葉の素が明らかではありません。何か芝居の台詞にでも出で来るような響きが面白い言葉ではあります。では、次の用例を見てください。

   ちーはんがすんだら、ちょっこしてごしてごいて。

「ちーはん」は直接耳にすると微妙に「つーはん」とも聞えるのは「ち・つ」が融合した音になっているからで、出雲弁の特徴をよく現しています。したがって、此処で言う「ちー」は漢字で書けば「昼(ちゅう)」ですから、言葉の意味は「昼飯」つまり「お昼ご飯」が終わったら「ちょっこし=少し」「てごして=手伝って」ください、になります。次に、全く見当もつかないと思われる「ど」ですが、これは「どう」がつづまったものだと思われ漢字で書くと「鼓」の下に「冬」という字を置きます。だから、もともとは「とう」だったのかも知れませんね。意味するものは「大太鼓」のことで、下の画像が松江市で行われている行列の風景です。

  真ん中の白く見えているのが大太鼓(「ど」)です

最後にもう一つ、次の用例を見てもらいましょう。

    お前、なしてこなをしっちょうかや。

   そげん、あら、どしだわな、学校がいっしょで。

雰囲気は伝わると思います。相手が「どうして、お前は、誰それ(こな)を知っているのか?」と聞かれ、「それは、友達(どし)だから、学校が一緒だったので」と答えている訳です。この「どし」も、耳には「どす」と聞えるのですが、恐らく「同い年」或いは「仲間同士」が素の言葉になっているのでしょう。では、今回の講座はここまでとします。

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