ダダさんの正しい出雲弁講座                  サイトの歩き方」も参照してください。

これまでも折に触れ、出雲弁の「特徴」なるものをご紹介してきましたが、今回とりあげる「な行」についても独特の出雲訛りが手伝って他国の人には、かなり聞き取りにくい微妙な「音」が含まれて居ます。先ずは、分かりやすい用例から見てきましょう。

    まーず、にくじらしにょーばんこだのぉ。

「まーず」は、副詞の「まずまず」と考えても良いのですが「まあまあ」という感動詞の意味合いもあり、二つを融合させた言葉と解釈するほうがニュアンスを良く伝えているのではないでしょうか。従って、用例の意味するところは「まあまあ、なんと憎たらしい女の子だ」といった感じです。「にょーばんこ」は「こ」を付ける事で年少者を指す言葉に変化させたものですから、当然「にょーば、にょば」は女性・婦人そして妻を意味している訳です。この語源は、皆さんも想像されるとおり、恐らく「女房(にょうぼう)」に違いありません。では、表に移ります。

 なーたき  ながまー  なくさん  なやむ  なんかくそ   なんだい   なんばぎん 
 にくじらし  にしんちま   にょーばんこ   にらんやこ 
 ぬくい  ぬくたらし  (のくたらし)
 ねこぐーま   ねしたくる  ねまー  ねんぱ
 のすと  のやき  のんびらと

    誰それさんは、なくさんに、何処何処へいかれたと。

    ちょっこにしんちままで、いきてくーわ。

    そこに、ねまっとらすこに、ねこぐーまを、もそんでごすだわね。

    やー、ぬくたらして、いけんわ

「な」の六番目に上げている「なんだい」は、見方によっては大変使い勝手の良い言葉です。と言うのも「なんだい」には元々「何何」という意味があるのですが、特に親しい間柄の関係にある人たち、例えば夫婦や兄弟姉妹など、共通の話題や経験そして嗜好などが前提にあって話しをする場合「おい、なんだいは、どこにあーかね」(あれは何処にあったかなぁ)と言う風に会話が進められることが多いのです。(つまり具体的に言わなくても解る、以心伝心、阿吽の呼吸といったところでしょうか)

   これが噂の「ねこぐるま」 です   PR

「なくさん」は「慰(なぐさ)み」ですから最初の例は「誰それさんは、気晴らしに(つまり遊びに)、何処そこに行ったらしい」という意味になります。「にしんちま」は「屋敷の西にある場所」というほどの意味なのですが、大抵はその方向にある「畑」を指す場合が多いようです。「ねまー」は「寝まる」で「座る」の意があり、「ねこぐーま」は手押しの一輪車を指します。だから三例目は「そこに座っていないで、手押し車を運んでください」になります。「ぬくたらし」「のくたらし」は何れも「非常に暑い」という言葉で、夏の午後などの挨拶で「なんと、のくたらしのぉ」という具合に話されるわけです。「ねこぐるま」の語源については諸説あるようでが『ワラで編んだ大型のムシロを「ねこだ」(ねこ)と言い、農家などで用いられていた』そうなので、それを運ぶものという意味で付けられた名前かも知れません。また「ねこ」の漢字表現は、あの猫ではなく「猪」のようですから、そう言われて見れば上の画像に大きなムシロを乗せた格好は、何となくイノシシの姿に見えなくもないですね。

ちょっこし、なやんで、みたぁ??

いわゆる標準語とは全く異なる意味合いで使われる言葉の一つが「なやむ」です。これは、

    おまえ、ちょっこし、これを、なやんでみたぁ。

という具合に話されるのですが、お分かりになりますか?勿論「悩む」ではありません。この言葉は「触る、いじくる」といった意味で使われるもので、方言を知らないと解釈に困る言葉の代表格です。また、同じようなものとして「のやき」を上げることが出来ます。これも「野焼き」のことではなく、出雲地方で作られる「大きな竹輪」の固有名詞で、考えようによれば「の」という原料のモノを「焼いて」造ったもの、という意にも取れますが、単純に「野」(野外)で焼いたモノかも知れません。お土産ものとして旅行客などに人気のある名産品は、材料にトビウオを使うことから「あご・のやき」と云われます。とびうおを何故「あご」と呼ぶのか分かりませんが、この呼び方は出雲に限らず多くの地域で使われています。

  「あご」こと、とびうお。因みに彼は島根県の「県魚」です

最後に、どうしても語源になるものが見つからない例をひとつ。

    こどもやつは、ねんぱとりに、いきたかね。

子供たちは一体何を取りに出かけたのでしょう?お分かりになる方が居るでしょうか?管理人が子供の頃には、何処にでも居たものですが、最近では、何やら「絶滅種」の指定を受けるほど希少になっているようです。童謡などにも取り上げられ、幼い子供たちが小川や、川とも呼べない里の溝、用水路そして田んぼの近くで網を持ち追い掛け回した「めだか」のことなのです。大きな魚は動きが素早く、浅い川でも中々網だけで捕まえることは難しいのですが、この「ねんぱ」なら、誰でも手にすることが出来る、生きた魚の代表だったのです。WEBで画像を見つけましたので、紹介しておきます。懐かしい方もおられるのでは…。

 最近余り見かけません   「めだかの学校」は川の中

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