日記(1927年) 4月4日(月)                         中原中也

 

私は全生活をしたので(1歳より16歳に至る)私の考へたことはそれを表はす表現上の真理についてのみであつた。謂はば。  (17歳より19歳に至る)そこで私は美学史の全段階を踏査した。実に。

 かくて私は自らを全部解放されたやうな風になり行つた。私はじつに味のない、長々しい時間を過すやうになった。けれども私は生を厭ふやうな気持ちにはならなかつた。私は自由だつた、魂に対し疚ましいことはちつともなかつた。が、やがてその状態も続いてるうちにアンニュイとなつた、私は非常に牆壁を隔てゝではあるが死を見るやうになつた。かくてわたしは舌もつれしながらに抒情するのだ。――働きます。




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