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 このページでは管理人がかつて大昔、詩人でありたいと熱望していた頃に書いた作品のいくつかを紹介しています。本人としては自己の感性を信じて言葉にイメージを注ぎ込んだつもりなのですが、果たして皆さんの心に届くものがあるのかどうか、少し不安です。でも、書かれた当時のままに復元しました。

 作品と直接の関係はありません

        

 

掌から  胸のあい間から

現とみえ  幻とみえ

溢れ落ちる  「いま」

ゆらめきながら  音もなく

露のひとしずくに  掻き消えて

 

鬱然と立つ峰の懐に

隠れ潜む如く  年老いたひとつの寺

 

  未だ明けやらぬ仄明かりに

木下陰は  揺れまどろみ

地を這う風は  足元を掠め去る

永遠にも似た時節の移ろいを観つづけた

荒々しくも不遜な大樹の  その下の

冷ややかに佇んでいる淡い陰の中で

呟くように

唸くように

何かが  呼んでいる

 

歳時を守り  場所を奪い合いながら

  葉を茂らせる枝枝は

夜来の雨に深々と首うなだれ

通う人も今はとだえた参道の肩に

無益な穴をうがつ

 

  未だ明けきらぬ古寺の

落ち葉と屑に犯された

底を見せぬ小沼から

朽ち果てた土橋の辺りから

青緑の水泡をしたがえて

血の気の失せて生白い

幾多の腕が浮き上がり

辺りをつつむ青草をかきむしり

引きちぎり

這い上がりきれず  誰かを招く

 

太柱に寄りかかり

かろうじて建っている本堂は

めぐりめぐる四季の手と

浮かれ奴たちの土足に打ち拉がれ

垢にまみれ  埃にまみれ

傾いた銅の本尊は

はがれ破れた天井板のあい間から

鈍い虚空を凝視する

 

形骸と化した山門に

陽と雨はそそぎ

空に  土に

還ってゆく

広がり  合わさり

消えてゆく

水面の点輪が

透明な天の階段を小走りに昇ってゆくころ

臼のようにまろやかな

ひとつの敷石に雨水は憩い

ひとにぎりの砂と

ひとかけらの白い舎利を底に置く

 

夕間暮れのうすもやを細い身にまとい

赤茶けくすんだ長々しい影を従えた

寂かな「いま」の後姿が

山の際に溶け込もうとしている

 

朝朗け  木下道でふとめぐりあい

言葉ひとつ交わすこともなく………

去ってゆく  後影のひとつ

立ちどまり

見返る面は  更に見えず

 

現とみえ  幻とみえ

掌から  胸のあい間から

溢れ落ちる「いま」

ゆらめきながら  声もなく

露のひとしずくに  掻き消えて

 

                                   同人誌 尖峰」5 より

夕間暮れの風景   PR

          

 

突き立つビルの峰々も

等間隔に殖えられた並木の線も

疲れ果てた顔付きの人々も

瞬くうちに掻き消えて

地平線と水平線が立っていた

 

迂闊にも肉体を喪失した神経達は徒に宙を舞い

常識家の意識は

何等成す術を知らなかった

 

沈みかけていたはずの太陽が

空に入りきれない程降りてきているのに

暑くすらなかった――――――

  当然だ

私は  影さえも失っていた

 

狂気の侵入を懸念した神経達は

懸命に何かを聞こうとしていた

完璧な沈黙が刻々と正確に迫り

意識は身勝手にも逃げ出そうとしている

 

太陽に流れ込む海原は波さえ立てず

天空に伸びゆく荒原は

埃もたてずに佇んでいる

意識の後ろ髪をしっかりと握り

神経達は遥かの彼方を目指して飛んだ

………………

 

大地は燃えてゆく

海原は煮えてゆく

揺れ動き  割れようとする世界

 

コロナの洗礼を受け傷を満身に跡した神経達と

瀕死に喘ぐ意識は

磨硝子に化身した大気の

全く見えない奥深い向こうから

何かが  現れる事を期待していた―――――

 

聞える

何かが聞えてくる

沈黙は去りつつある

飛べ  飛べ  飛んでゆけ

未だ世界は消えてはいない

 

                        同人誌「尖峰」3より

  船は自由の彼方に着くことが出来るのだろうか?

   

 

ゆれるゆれる

脳髄がブランコに乗っている

ひろがるビロードの黒

始まらない芝居の緞帳がゆれる

 

 溶けてゆく時計の針が

 凍りついた灼熱玉を

 一昨日に染め変える

 

他界の里をさまよい歩く透明な怪物が

きっと何かを企んでいる

何か とんでもない事を

………

 

沈む 沈む 沈んでゆく

逆回転のパノラマスコープが

諦めの小池に沈んでゆく

 

  意識はゆれる

  身体はゆれる

 

                    同人誌「尖峰」1より


     


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